医療法人 美﨑会 国分中央病院

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「クスリ」は「リスク」になる
 ─ 松枝寛治(薬剤部部長)

 薬剤部部長の松枝寛治さんは、当院のほか地域密着型特別養護老人ホーム「ソ・ウェルこくぶちゅうおう」、サービス付き高齢者向け住宅「メディカーサ国分中央」の入所者さんの薬剤管理も担う重要なお立場です。現在の課題は何か、今後の取り組みの方向性などについて、お話を聞きました。

── 厚生労働省の会議などで、病院薬剤師の方向性が議論になっています。

 病院薬剤師の今後の方向性は、入院患者さんの薬剤関係を全て面倒を見ることです。お薬の効能・効果等や用法・用量、副作用など幅広い対応が求められます。

 そうした中で、特に重要になるのは有害事象のある多剤服用(ポリファーマシー)の解消に向けた取り組みです。

 近年、多剤服用が問題になっています。6剤以上の場合に副作用の相互作用でリスクが高まるという問題です。できる限り、6剤よりも少なくおさえる必要があります。

 当院でも入院患者さんの高齢化が進んでいます。高齢になると、複数の疾患を抱えることが多く、あちこちが悪くなります。それに伴い、ドクターは患者さんの訴えによって薬を増やしていく傾向があります。

 患者さんが「あっちが痛い」「こっちが痛い」と言えば、その痛み止めの薬を処方する。「どこかが悪い」と言えば、そのためのお薬を増やしていきます。

 しかし、実はその患者さんの訴える痛みなどは、今飲んでいるお薬による副作用のせいもあります。

 ですから、6剤以上服用している薬の中で、ある薬を減らすことによって、そういう今まであった副作用がなくなることがあります。その結果、元気になってくる患者さんもいます。

 ポリファーマシーの問題は藤﨑理事長もずっと関心を持っています。

 約3割は、服用しているお薬のポリファーマシー。6剤以上服用している患者さんが多いのです。それを減らすことによって逆に良くなった、副作用もなくなったという例もあります。内服の場合ですが、転倒や転落のリスクが高まるというデータも出ています。

 そういう意味からも、ポリファーマシーを解消する。できるだけ薬剤を減らしていくようにする必要があると思っています。

── 現在の取り組みをお聞かせください。

 私たち薬剤師は、入院時に残薬を確認しています。ドクターには服用している薬を伝えます。

 しかし、多剤であるからと言って、いきなり減らすドクターは少ないのです。というのは、薬を減らしたことによって状態が悪くなるといけません。したがって、ドクターは積極的に減らそうとはしない傾向があります。

 むしろドクターとしては、患者さんからの訴えによって追加する、増やしていく方向になるのです。

 ですから、薬剤師の役割は、その中から、できるだけ副作用防止の意味からも似たような薬はないかとか、服薬指導に行って患者さんのお話を聞いて、「これは必要ないんじゃないかな?」というお薬を主治医に伝え、できるだけポリファーマシー対策を講じることです。できるだけ、お薬を減らしていくような方向に進めばいいと思っています。

 「クスリ」を逆さまに読むと「リスク」になります。ですから、飲み方を間違うとリスクが高まるということです。薬は一種の毒ですから、できるだけ少ないほうがいいのです。最低限必要な薬だけを飲んでいただくという方向で私たちは取り組んでいます。